White-Lips Vocal Collection 3 「I wish」のお話

CD 10曲目、最後の曲「I wish」はサガプラネッツ様のPCゲーム「カルマルカ*サークル」のEDテーマとして制作されました。

CDに収録されている他の曲と雰囲気というかノリがまったく違うのがわかると思います。そういう指示があったことも確かですが、ちょうどこの頃はこういう曲を作りたいなと思っていた時期でもありました。

この曲を作る1〜2年くらい前から「ダブステップ」という音楽ジャンルが自分の中で急激に流行り始めたのです。「左のおっさん」として一時期有名になった(笑)、この方のダンス動画とかよく見ていました。

すでに多くの作曲家がダブステップを取り入れていて飽和状態でしたが、せっかくだから僕もやってみようと作ったのが「I wish」の大サビ部分になります。歌詞でいうとここですね。

午前零時を過ぎた頃 雲間に星が見えてきて
待ち望んだ逢瀬 ミルキーウェイにカササギが飛ぶ

「これがダブステップだ!」とは恥ずかしくて言えないのでダブステップ風ということにしておいてください。

また、歌のレコーディングについてはサビで多重録音(1パートにつき確か左右各4本、合計8本)をしてスピーカーの左右に振るということをやっています。これは別作品の「晴れときどきお天気雨(ぱれっと)」のOPテーマ「花束」でやり始めたことですが、広がりと厚みが出るのが気に入ったので、この曲でも採用しています。WHITE-LIPSにしてみれば同じパートをひたすら8回づつ歌わなくてはならないので苦痛だったかもしれません(笑)。

歌詞は見たまんま七夕がテーマです。ゲームの物語が七夕をテーマにしたものだったので、それに合わせた感じです。

ただ、この歌詞を書くときにはなんとなく岩明均氏のマンガ「七夕の国」が頭の片隅にありました。特に裏読みが必要となる歌詞を書いているわけではありませんが、ここで言う「カササギが飛ぶ」というのは日常ではない超常現象であり、決して素敵で微笑ましいだけの現象ではないと思っています。「カササギが飛ぶ」ことによって得られた素敵なこともあったでしょうが、その副作用とも呼べる悪い何かも同時に呼び寄せているのです。

「カルマルカ*サークル」の物語にも描かれていますが、本来儀式には対価が必要とされています。メジャーな対価は生贄です。素人が対価のない儀式をすると大変なことになるよ…というので有名なのは「こっくりさん」でしょうか(最近の人は知らないかな?)。

この場合、儀式が成功してしまうというのはある意味悲劇です。

願って 願って 空へ手をのばす
過ちも後悔も君と出会うための礎(いしずえ)
すべてを受け入れ その先を目指そう
確かな想いで

そういう事も含めて、このサビが歌われています。

とはいえ、そういうエッセンスが少しあるよ程度のことで、全体としては普通の恋の歌だと思ってください。綺麗で、甘く切なくて、ちょっと怖い。そんな感じです。

この曲は完全に作詞が後です。曲を完成させてから作詞をしています。この頃からそういう作り方が増えてきました。どちらが良いというわけではないので、必要に応じてどちらもできるにこしたことはありませんが。

というわけで、以上をもちましてWhite-Lips Vocal Collection 3 各曲のお話は終了です。ありがとうございました。

もしこの作品に興味がありましたら、ぜひ購入して聴いてみてください。アルバムの詳細は以下のリンク先にてご覧いただけます。