最近は多くの人が何かしら物を作るという行為をしているね。もちろん仕事として音楽や文章を作っている人もいるし、個人のHPで日記を書いている人だっている。何もやっていないと嘆いている人だって、よくよく探せば何かしら生み出しているものさ。

ところでさ、誰しも言いたいことってあるんじゃないかな?そんな大層な事じゃなくても、会社の愚痴とかさ、ゲームで最高得点をとったとか。君だってほら、買ったばかりのバッグを自慢したくてうずうずしているだろう?

うわ、やぶ蛇だったか。ゴメンゴメン、後でちゃんと聞くからさ。話を先に進めていいかな?「え~」じゃなくて。そうだ、紅茶でもいれようか。スーパーの安売りだけどね。

えっと、何の話だっけ?そうそう、言いたい事があるんじゃないかって話だったね。人間はね、本当は喋るのが大好きな生き物なんだ。もちろん大人しくて喋るのが苦手な人もいるかもしれないけどね、それは苦手というだけで嫌いなわけじゃない。ちゃんと話を聞いてくれる人に出会いさえすれば、ほとんどの人は話し手になりたがる。というのは本の受け売りだけどね。でも本当なんじゃないかな?

自分が素晴らしいと思ったもの、自分が嫌だと思ったもの、そういうものを身近な人に話すことで共感を得たい。それはとても自然なことだと思うよ。

でもね、それを「作品」に昇華させようとなると話は違う。例えばさ、すごく面白いミステリ小説を書いた人が、あまりの嬉しさに内容を言いふらしたとするよね。君は誰が犯人で、大体どんな話なのかも知ってしまっている。そんな小説をわざわざ買おうと思うかな?

つまりそういうことなのさ。小説に限らず、音楽でも絵画でも彫刻でも、作り手は自分の考えていることを表現したくてうずうずしている。思いついた事は全部詰め込みたいと思っている。でもそれじゃあただの自己満足なんだ。いろんな色の絵の具を混ぜたら黒になってしまうだろう?さすがに真っ黒になったキャンバスを見て満足する人はいないと思うけどさ。

でもさ、言いたい事が言える環境にいるっていうのは、やっぱり素晴らしいことなんだろうね。政治的な環境もあるし、友達の有無だって重要な問題だ。僕だって君という聞き手がいるから喋ることができる。

え?僕ばっかり喋ってないで、はやく自分にも喋らせろって?

了解。やっぱり人は話し手になりたい生き物なんだろうね。実感するよ。それじゃあ僕の話はおしまい。今度は君の番だ。幸い今日の服装は黒で統一してるから、これ以上黒くなることもないしね。